前之園賞受賞者一覧

              第5回 前之園賞    (授賞式2015年4月1日)

【神戸大学大学院医学研究科外科学講座肝胆膵外科学分野准教授】 福本 巧 准教授

『肝胆膵難治癌に対するスペーサー手術による新規粒子線療法の開発』

 肝胆膵癌で根冶的手術が不可能な患者の予後は不良で、切除不能例に対する新たな根治的治療方法の開発が強く望まれていた。一方、粒子線治療は、通常のX線とは異なり、線量集中性に優れ、前立腺癌や肺癌で優れた抗腫瘍効果を示していたが、腹部にある肝胆膵領域の悪性腫瘍では消化管が近接するためその対象は限定的であった。このような粒子線治療の限界を克服し、肝胆膵癌などの腹部悪性腫瘍患者を粒子線で治療可能とする新医療技術としてスペーサー手術と粒子線による体内空間可変粒子線治療法 (SMPT) を考案し臨床実施した。2007年から既存の医療材料をスペーサーとして130例以上の難治性腹部悪性腫瘍患者を治療し優れた治療成績を得ている。さらに本療法の安全性と有効性を高めるため治療後に自然吸収され、十分な放射線遮蔽力を持つ吸収性スペーサーの開発に着手し、成功した。このスペーサーは動物実験で安全性と有効性が確認され、経済産業省の支援を受け現在臨床試験を実施中である。また2012年からは全国の医療機関、粒子線施設とスペーサー治療研究会を組織し、本療法の普及と安全性の向上を目指した活動を開始している。

 福本巧准教授は肝胆膵外科の准教授として、難治性の肝胆膵疾患に対する新医療技術の開発に積極的に取り組み、経皮的肝灌流化学療法やスペーサー手術を用いた粒子線療法(体内空間可変粒子線治療法:SMPT) などの独創的医療技術を同校から発信する原動力となっています。また臨床面でも肝臓外科、肝移植にとどまらず肝胆膵外科領域の高難度手術に精力的に取り組み、優れた実績を上げています。

※2015年4月時以前の記載内容となっています。

【神戸大学大学院医学研究科外科系講座腎泌尿器科学分野准教授】 三宅 秀明 准教授

『ロボット支援前立腺全摘除術後の尿禁制回復における尿道周囲線維化および炎症の意義』

 三宅秀覚准教授は神戸大学医学部附属病院における泌尿器科腫瘍領域の手術および薬物療法において中心的役割を果たし、近年は特に泌尿器科領域におけるロボット支援手術の実践および教育に熱心に取り組んでいる。具体的には、ロボット支援手術の遠隔地教育システムの確立、開放前立腺全摘除術との比較において神経温存手技の評価、腎門腫瘍に対するロボット支援腎部分切除術の有用性等を明らかにしてきた。さらにこれらの日常臨床における最新の知見を、国内外の主要学会および一流の学術誌に積極的に発表している。

 三宅秀明准教授は平成5年3月に神戸大学医学部を卒業後、泌尿器科学教室に入局し、その後一貫して泌尿器科領域の悪性腫瘍の臨床および研究に邁進して参りました。平成6年4月には大学院に進学し、幾多の新知見を明らかにし優れた業績をあげています。またこの間一層の研究発展を期して熊本大学腫瘍医学教室に国内留学し、さらには平成10年4月より Vancouver Prostate Centre に海外留学しております。帰国後は神戸大学医学部附属病院等にて、泌尿器科悪性腫瘍を中心とした幅広い臨床業務に従事し、平成22年には現職である准教授に就任しており、さらに活発に臨床および研究活動に取り組んでいるところです。

※2015年4月時以前の記載内容となっています。

【神戸大学医学部附属病院放射線科准教授】 山口 雅人 准教授

『緊急大動脈・末梢動脈疾患に対するインターベンショナルラジオロジー(IVR)の応用に関する研究』

 現在わが国の低侵襲治療手技の発展には目覚しいものがあり、特にインターベンショナルラジオロジ一 (IVR) は低侵襲治療の中核として臨床医学の発展に大きく寄与してきた。血管疾患や各種悪性腫瘍に対する局所治療や、非血管領域などを含めた全身のあらゆる領域の画像ガイド下治療や検査として発展してきた。

 山口雅人准教授はこれまでこの IVR を専門として、神戸大学病院で臨床各科と深く関わりを持ちながら、IVR の発展・普及に貢献してきた。また後輩の指導に尽力して、多くの IVR に精通する人材を育成してきた。近年では、大動脈疾患に対する低侵襲治療として登場し広く普及してきたステントグラフト治療の先進的な指導医として、血管疾患の臨床、低侵襲治療に従事してきた。特に急性大動脈解離・外傷性胸部大動脈損傷・胸部・腹部大動脈瘤破裂、末梢動脈急性閉塞などの緊急血管疾患に関るす IVR ・血管内治療に関して臨床に積極的に取り組み、この分野に精通し多数の臨床研究の成果を上げている。

 山口雅人准教授はこれまで IVR・血管内治療を専門としてきており、特に血管疾患に関する臨床研究で、多数の成果を挙げてきた。また実験動物を用いた基礎研究にも精通し、優れた業績を上げている。血管疾患の低侵襲治療における問題点を臨床医の観点からいち早く認識し、独自のアイデアで解決することを絶えず模索してきた。

※2015年4月時以前の記載内容となっています。

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