前之園賞受賞者一覧

              第8回 前之園賞    (授賞式2018年4月2日)

【神戸大学大学医院医学研究科・糖尿病・内分泌内科学】小川 渉 教授

『2型糖尿病の発症機構、病態に関する研究』

 小川渉博士は、長年に亘って2型糖尿病の発症機構やその病態に関する研究を行ってきた。なかでも、インスリン作用やインスリン抵抗性発症の分子機構に関する一連の研究は、世界的にも高く評価されている研究である。

 臨床的研究においても、インスリン感受性の詳細な評価法である正常血糖高インスリンクランプ法を用いた2型糖尿病患者の臨床病態に関する研究、MRスペクトロスコピー法を用いた臓器の脂肪蓄積とインスリン抵抗性の関連に関する一連の研究など、独自性の高い研究業績を残してきた。

また、遺伝的要因によってインスリン抵抗性の難治性糖尿病を呈する、A型インスリン抵抗症に関しては、AMED研究班の主導的班員であり、全国レベルでの疫学調査や患者レジストリに関する調査・研究も進めている。

 小川渉博士は、過去一貫して2型糖尿病に関する臨床的、基礎的研究に従事してこられ、特にインスリン抵抗性の研究については、我が国をリードする研究者の一人です。この業績により日本糖尿病学会賞をはじめ、各種の学会賞も受賞しておられます。また、神戸大学における教育、診療、研究活動に加えて、日本肥満学会や日本糖尿病学会の理事として学会活動を通じた臨床医学の発展にも尽力してこられました。

今回、小川博士が計画されている研究計画は、科学的見地から独自性・新規性が高いだけでなく、創薬を視野にいれた橋渡し研究としても発展が期待できる研究と考えます。

※2018年4月時以前の記載内容となっています。

【神戸大学大学医院医学研究科・附属感染症センター感染制御学分野】 勝二 郁夫 教授

『C型肝炎ウィルスの増殖機構および病原性発現機構の解明と新規治療法への応用』

 C型肝炎ウィルス(HCV)は血液を介して感染し、高率に慢性化し、慢性肝炎、肝硬変へと進展 し、やがて肝細胞癌を発症する。HCV感染者は全世界に2億人、日本に170万人いると推定されており、その治療法の開発は重要である。HCV感染は肝内病変のみならず、多彩な肝外病変を呈することが知られており、その中でも糖脂質代謝異常、鉄代謝異常は肝発癌においても重要な役割を果たしている。勝二郁夫教授はこれまでに、神戸大学大学院 医学研究科において、HCV感染による糖脂質代謝異常の分子機構の解析を行い、HCV NS5A蛋白質を介した、糖新生系の亢進、宿主転写因子 HNF-1αのリソソーム系分解を介したGLUT2の発現抑制などの新規病原性発現機構を見いだし、報告してきた。また、HCV感染に伴う肝脂肪化の分子機構を解析し、HCV NS3/4A プロテアーゼによる脂肪滴制御因子SPG20の切断を報告してきた。

  HCVの新規治療法 (DAA製剤)の開発により、C型慢性肝炎の治療は著しく進歩してきたが、DAA に対するエスケープ変異体の存在や、治療奏効後の肝発癌が報告され、宿主因子を標的にした新規治療法の開発が望まれている。勝二郁夫教授はHCVウィルス増殖に必要な宿主因子の解析・同定を行っており、それらの宿主因子を標的にした新規治療法の分子基盤確立を目指して研究を進めている。

 勝二郁夫教授はC型肝炎の領域、特にHCVの増殖機構および病原性発現機構の解明や、宿主因子を標的にした新規治療法の開発で優れた独創的な業績を上げてきました。特にHCV感染による糖脂質代謝異常の病態解明において、顕著な業績を上げています。現在、学内では医学研究科副研究科長、副医学部長、次世代国際交流センター長を務め、学外では神戸肝疾患治療研究会の代表世話人、AMEDの評価委員も務め、国内を代表する第一線の医学研究者として活躍されています。

※2018年4月時以前の記載内容となっています。

HOME

TOP

開催見送り(2020年)

第10回 前之園賞 (2021年4月8日)

COPYRIGHT(C) KEIAI MACHIZUKURI FOUNDATION ALL RIGHTS RESERVED